ウクライナの国際私法における公序、強行規範、および法律回避について 
pages 149 - 159
ABSTRACT:

本稿は、公序・法律回避・強行規範という、ウクライナの三つの国際私法制度について検討している。筆者は、公序には、1)ウクライナの法律における根本的かつ最も重要な原則、特に同国の憲法・私法・民事訴訟法の原則、2)ウクライナの法的秩序の基盤となっている一般的に認められた倫理原則、3)それを保護することがウクライナの法制度の主要な役割であるところの市民、法人、国家の正統な利益、4)人権の国際的な法的基準を含む、一般に認められた国際法諸原則と規範、が含まれるとしている。筆者は、強行規範と言う場合、国家の最も重要な規範のことであり、これらの規範の法源は、ウクライナの法律によってのみ規定される公序にあると説明している。筆者は、各事案において当事者が選択した準拠法の是非を争うような強行規範の存在を証明するよう勧告している。また、筆者は、「法律回避」の概念の使途には次のような特徴があるとしている。つまり、実際の取引の当事者による準拠法の選択が誠実に行われ、その逆(準拠法の選択が誠実に行われなかったこと)が、実際の各ケースにおいて裁判所により証明されなければならず、「法律回避」のメカニズムが、必要に応じて紛争問題の解決を行う裁判所(裁判官)が利用できる手段として意図されているという仮定を立てている。さらに筆者は、これら三つの制度はすべて密接に関連しており、ウクライナ裁判所が今後行う実務によってのみ、これらの制度が実際に理解されたとおりのものであることを示すことができると結論づけている。

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about the authors

教授資格博士(Dr. hab.)。キエフ国立言語大学法学部長、Andrzej Frycz Modrzewski Krakow大学教授。国際公法および国際私法に関する著書多数。

E-mail: amerezhko@yahoo.com